昭和ワープトンネル

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1990年代、東南アジアの熱帯雨林は急速な開発や伐採により深刻な減少に直面していました。この環境危機に対して、日本国土開発は1994年にマレーシアのトレンガヌ州で熱帯雨林再生プロジェクトを始動させました。「建設を通じて豊かな社会づくりに貢献する」という企業理念のもと、ER企画委員会を設けて環境保全の行動指針を定めた同社は、東南アジア支店からの熱帯雨林減少の課題提起を受け、半世紀を超える歳月が必要とされる熱帯雨林の再生に向けた取り組みを開始したのです。

現地との協力で実現した、新しい植林法

未知の分野への挑戦として、同社はまず情報収集から始め、様々な実験例の調査研究を続けました。トレンガヌ州政府および森林局との協議を重ね、計50ヘクタールの用地に二通りの植林方法が採用されました。プランAでは既存の早生樹を間引いてフタバガキ科樹種を植林し、プランBでは計画的に配置した早生樹の間に後からフタバガキ科樹種を植えつける独自の方法が試みられました。単一種だけの人工林ではなく、高品質の郷土樹種を交えて自然に近い複層林を目指すこの取り組みは、熱帯雨林の生態系保全という視点に基づくものでした。

長い歳月を見据えた環境保全への挑戦

定期的なメンテナンスとモニタリングに支えられたこのプロジェクトは、民間企業では前例のない郷土種による複層林再生の試みとして注目されました。2ヶ月ごとの整地や雑草刈り、枯れた苗木の植え替えなど、丁寧な管理作業が続けられる一方、収集したデータは樹種ごとに整理分析され、今後の熱帯雨林再生の貴重な資料として活用されることになりました。一人の社員の提案から生まれたこの小さな試みは国境を越えた環境保全活動として、マレーシアの大地に根付き、熱帯雨林の再生に向けた一歩となりました。

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